えぼし君考

きのうの映画館では、私の目の前に、毛糸の帽子をえぼしのように立てた若者が座った。横には彼女らしき若い女性。
帽子は、映画に三角形の影を作り、たいへん目障りであった。
私は彼を「えぼし君」と心の中で呼び、えぼしを脱げ、と念を送った。が、えぼし君は最後までえぼしを脱ぐことはなかった……。うしろからえぼしをぐぐっと押さえたい気持ちを、ぐぐっと押さえながら映画を観て、帰った。
そして思う。


A えぼし君は、今後も様々な場所で迷惑をかける可能性がある。よって、ここで注意して、迷惑を食い止めるべきであった。


B えぼし君がえぼしにしている事には、深い事情(モヒカンの髪形の役で舞台出演中など)があった可能性もある。触れるべきではない。


C えぼし君は、帽子をかぶっている自分の姿が見えない。よって彼女が注意すべきだった。


D えぼし君カップルは、いずれなんらかの形で、世の人々の念を受けることになるだろう。今は、遠くの他人として見守りたい。


うーん。
とりあえず映画館側から、携帯電話禁止令とともに、帽子禁止令も出してほしいと思ったことでした。