22日に発売になる小説『薬屋のタバサ』(新潮社)の見本ができました。
担当のノリオさんが、花のアレンジメントともに届けてくれたので、一緒に撮影してみました。ノリオさんはクレバーなロマンチスト。お世話になりました!
イナキヨシコさんの装画もうつくしく、とてもきれいな本になり、うれしいです。
『薬屋のタバサ』とは、文字通り、薬屋さんの話です。タバサは、女の子ではなくて、中年の男の薬剤師なのです。『青卵』収録の、


あれは虹でしたか薬屋の奥の庭にこどものあなたいました


という歌のイメージから出発しました。どうぞよろしくお願いいたします。



本が出るとき、転校生として廊下を歩いていたときのように緊張してしまう。なんどか重ねると慣れるかと思いきや、緊張感は減ることはないです。
緊張をやわらげらるためにとなえる短歌として頭に浮かぶのは、


ひなにんぎやうのかたなのつばやすらかな眠りにおちるためのおまぢなひ 


この作者の他の歌。

 
空からはゆめがしぶいてくるでせう 手にはきいろい傘のしんじつ   
ずつと一緒でなければあはないほうがいい陽だまりでちぢみゆくテディ・ベア
こんなにも風があかるくあるために調子つぱづれのぼくのくちぶえ 
わかることはほんたうのこといつまでも陽にゆすられて木馬はゆれる



すべて元「かばん」会員の山崎郁子さんの第一歌集『麒麟の休日』(沖積社・1990年刊)より。初めて読んだ20代のときよりも、今の方が、彼女の歌が沁みる気がする。山崎さんは、若くして、いろんなことが分かっていた人なのかもしれない。歌はふんわりしているけれど、本人はとてもしっかりした人で、「かばん」に入りたてのころ、パキパキ指導してもらった記憶があります。
今、どうしてるんだろう、と何故か強く山崎さんを思い出す夜なのでした。