『夏鴉』批評会
神保町にて澤村斉美第一歌集『夏鴉』批評会に、斉藤斎藤さん、川野里子さん、山田富士郎さん(司会・花山周子さん)とともにパネリストとして出席。
角川短歌賞を受賞した、まだ二十代の新鋭ですが、非常に巧緻な作品が並んだ、優れた歌集です。
言語感覚、知的センス、認識の鋭さなど、ほんとうにすばらしく。
それゆえにそういう方向にいかざるを得ない、という感じに、抑圧があるのでは? もっとつきぬけた歌ができるのではないか? という意見が出てきたところでディスカッションは終了。もう少し歌に即して話すべきだったか。
友人の友人批判にうなづきつつときをり春の蚊を潰したり 澤村斉美
逢ふまでの時の長さにはさみ込む文庫の栞よぢれたままで 〃
逆光の鴉のからだがくつきりと見えた日、君を夏空と呼ぶ 〃
マンションに若き家族が住みてをり子の泣く日々が彼らの若さ 〃
不意に影もたらし長くとどまれる父は襖と思ふまでしづか 〃
初めてお会いしたご本人も、作品同様、知的で冷静な方で、少し話しただけで、ミントガムを噛んだように爽やかな心持ちになったのでした。
ミントガム切符のやうに渡されて手の暗がりに握るぎんいろ 澤村斉美
巧い歌、名歌、愛唱歌、話題になる歌、それぞれ違うが、重なることもある。
なんのために短歌を詠むのか、ということを帰り道で考えたのだった。