運動会の忘れ物

higashinaoko2004-06-04

 朝、カボの運動会へ。リンの高校も運動会だったのだが、こちらは遠くて行けず。


 中学校ともなると、もう子供と一緒にお昼を食べないので、お母さん同士でウェンディーズへ。


 ふたたび中学校に戻ってカボの100メートル走をみたあと、打ちあわせのためいったん帰宅。


 麹町のホテルにて、歌画集のデザイナーと打ちあわせ。
 帰りに青山ブックセンターにて、穂村弘さんの新刊『もうおうちへかえりましょう』と宮沢章夫氏の『牛への道』を買う。平積みの「おうち」の横には『短歌があるじゃないか。』が平積みに。もし、隣の高さと同じだけ積んであったとしたら、どちらもかなり減っている。がんばってくださいね、本たち、と、ここにあるすべての本がなんだかいとしくなる。


 本のデザインについてひとしきり打ちあわせしたあとだからか、本の大きさ、色、質感、などなど、一冊一冊だれかがこころをこめて作ったのだなあ、と感無量になり、うろうろと歩き回り、熱心に立ち読みしている人を見ては、自習を見回りに来た教頭先生のような面持で微笑んでしまう。挙動不審ナリ。



 とっぷりと日も暮れて、自宅のある駅に帰り着いたとたん、中学校に椅子を忘れてきたことを思い出す。運動会(あ、中学は「体育祭」って言うんだったか)見学のために持参した、簡易椅子。お昼を食べに行くとき、バックネット裏に置いといたまま、失念してしまっていた。あれはリンがエレキギターを弾くときに使っている椅子だしなあ、なくしたらえらいこっちゃ。


 というわけで、夜の中学校に侵入することを決意。車の出入り用の門を引いて体をすべりこませる。おりしも、沈みかけの大きなオレンジ色の月が校庭の上に浮かんでいる。目的のバックネット裏は、校舎をぬけた、いちばん奥。部屋で唯一灯のともっている保健室や、非常口のみどりの灯をたよりに、そろそろと歩いていく。校舎の、手形のような壁のしみがこわい。こわいながらも階段を降りていくと、たしかに自分が置いた場所に椅子はたたまれて置いてあった。しかしなぜかホームベースが上にあった。こころやさしい野球部員が、椅子が飛ばないように置いてくれたのだろうか。椅子を小脇に抱え、またそろーりそろーり、夜の学校をあとにする。


・教室にとり残された影たちは必ず何かに寄り添いなさい  千葉 聡