夏の文庫

夏になると、文庫フェアをやっていて、そういうお祭りは案外好きなので、なにやら買ってしまうのだが、今年は芥川龍之介の『河童』(集英社文庫)を購入。
巧緻な文章ながら、弱者に対する愛憐ややさしさがにじんで、ぐっとくる。顔立ちが鋭いので、その印象が先立つが、明治の文豪たちの中でも、もっとも人情味のある人だったのではないかと、ふと思う。


「短歌現代」8月号に、「都市と短歌の精神史」として黒瀬珂瀾著『街角の歌』(ふらんす堂)の書評を寄せています。
この書評を書いていたときのことをネタにしたものが、「青春と読書」8月号の「ゆずゆずり」に出てきます。合わせてお読みいただけると、二倍楽しめるかと、思います。


昨日の穴埋めは「氷片」でした。


・稲妻の閃きわたる夜籠りに妻氷片のごとく眠れる       佐藤通雅


薄暗い部屋で寝ている妻を、稲妻の光が冷たい氷のカケラのように映し出したのですね。雪女の伝説を思い出す、ひやっとする短歌です。


次回は


・さ庭べに夏の西日のさしきつつ「 * * 」のごと鞦韆は垂る


「鞦韆」は「しゅうせん」と読み、ブランコのことです。
庭にブランコのある家、あこがれでした。