ぷらむ短歌会5月

ちょっと肌寒い一日でした。
今月のぷらむ短歌会では早川志織さんの作品を紹介しました。


種の起源』より
・今日われはオオクワガタの静けさでホームの壁にもたれていたり
・傾けて流す花瓶の水の中 ガーベラのからだすこし溶けたり
・薄青きセーターを脱ぐかたわらでペペロミアは胞子をこぼしていたり
・欲しいものはこうして奪う 校庭の柵にからまる明きヒルガオ

クルミの中』より
・青空のネジきりきりと巻かれたり一月一日風のない朝
・脈を診るかたちにわれはぶどう樹の古枝の黒きふくらみに触る
・寄生されし大イモ虫のからだして寝ころびている産むのは間近
・みどり子はうすき唇を動かして春の湿りを吸いつつ眠る
・樹のごとく浴室に立ちて一日の余りの乳をこぼしていたり
・二人子といる梅雨の日はにぎやかなクルミの中に棲んでいるよう
・抱きやればそのままわれを抱きてきてこの子らの手足やわらかく伸ぶ
・幼子がはじめて立ちて歩くときリビングがとおい野原に見えた


早川さんの歌は、感情をはっきりと打ちだした歌は少なく、植物も虫も自分も赤ん坊も、独自の身体感覚で捉えているところがおもしろいと思う。


題は「ガラス」。今までの語と違って、熟語などにはならず、限定されているので少し難しかったかな、とおもいきや、ユニークな「ガラスの思い出」が引き出せて楽しかったです。